学振DC(社会科学)の申請書を公開します

(2017/2/20 不採用時(DC1)の申請書も掲載しました。)

DC2申請書

少し前になりますが、平成29年度の学術振興会特別研究員DC2への採用内定をいただきました(面接免除)。そこで、採用にあたり提出した申請書を公開いたします。以下にリンクを貼っておきます。研究課題名は「無業経験の長期的影響にみる格差生成プロセスの男女比較研究」です。

学振DC2申請書(麦山)

分科・細目は「社会学」になります。

Web上に他の方の学振の申請書がアップロードされていたりするのですが、社会科学のものは案外少ないので、とくに社会科学で申請される方の参考になれば幸いです。

一般的なコツとか注意点は[学振 申請書 書き方]とかで検索すれば出てくると思うので、自分が申請書を書くにあたり気をつけたこととして、以下の3点を挙げておきます。

明らかにしたいことを一文で表す

あまり詳しく書く必要はないかと思いますが……自分がどのような方法によって、何を明らかにしたいのかを一文でまとめることが重要と思います。審査員の先生方は一枚一枚の申請書を読むのにそこまで時間を割かないと考えると、なるべく短く研究の重要性をまとめることが大事になるだろうし、また一文で分かりやすくまとめることで、自分の研究構想が整理できます。

  • 自分の場合:「本研究の目的は、無業経験がキャリアに与える長期的影響とそれにともなう格差がいかなるメカニズムで生成するのかを、年齢と非正規雇用に着目した男女比較によって明らかにすることにある。」(申請書p.5)

社会的に重要な問題であることを述べる

申請書を読む人として、社会学者だけでなく、経済学者、政治学者、法学者…といった他の社会科学者がいることを想定して問題を立てることが大事だと考えました。

  • 自分の場合:「1990年代以降の経済停滞を背景として、日本においても完全失業率は高い水準で推移している。一度働き始めたとしても、キャリアを中断し無業を経験する人びとは増加しつつあり、これまで安定したキャリアを歩むとされてきた男性にもその影響は及んでいる。」(申請書p.3)

また、この課題を明らかにすることでいかなる政策的な含意が導かれるのか、社会問題の解決に寄与しうるのかということを書くことも必要になると思います。

とはいえ実際には、自分の専門分野である社会学あるいはそのなかでもさらに小さな分野にもとづいて研究を進めることになるので、そこへの理論的・経験的貢献が第一義となることを念頭に置くのが大事かなと思います。

社会調査に携わった経験

自分のように社会学で計量分析を用いた研究の場合、自分で調査や実験を行うということは少なく、むしろ既存の社会調査データの二次分析が主なアプローチになってきます。日本でも社会調査データのデータアーカイブはかなり整理されてきて、院生でも比較的容易に大規模社会調査データの分析を行うことが可能になっています。

一方で、こうした研究はまだまだ一般的とは言えないですから、「自分で調査していないデータの分析はお手軽で、実態に沿った内容にならない」といった誤解を持たれる可能性もあります。そこで、調査データの作成に少しでも関わった経験がある(データの構造に習熟している)ということを示したほうがよいと考えて、「研究目的・内容」や「自己評価」の欄ではこのことを書いておきました。

  • 自分の場合:「数多くの社会調査プロジェクトに参加している。とくに、本研究で中心的に使用する3つの社会調査プロジェクトにはいずれも深く関わってきた…」(p.9)

不採用だったときの書類(DC1)

DC2を出す1年前(平成28年度募集)には、DC1に申請書を出していました。研究課題名は「職業経歴にみる格差生成メカニズムのジェンダー差に関する実証研究」です。こちらは、面接まで行き、補欠→不採用でした。不採用だった申請書も何かしらの参考になるかもしれないので、載せておきます。

学振DC1申請書(麦山)

DC2とくらべて、とくに以下の点で問題があったと考えています。

テーマが明確でない

これが一番大事だったかなと自分では思っています。今になって申請書をよむと、何やら職業経歴の男女差を見たいようだ、ということが分かるものの、具体的にどのような作業をするのかが見えにくいように思います。DC1提出時点(5月頭くらい)にはなんとなくキャリアと不平等、ジェンダーに関することをやりたいというところまでは決まっていたものの、テーマが明確に決まっておらず、その迷いが書類に現れているような気がします。

目的も一読しても何をやるのかが分かりにくい感じになっています。

  • 「本研究の目的は、日本の労働市場において、格差生成メカニズムのジェンダー差が時代によってどのように変化してきたかを男女の職業経歴から明らかにし、そうしたジェンダー差の変化がジェンダー格差の縮小にたいしてどのような影響を及ぼしたかを解明することである。」(申請書p.5)

寄って立つ先行研究群がみえにくい

BeckerやDoeringer and Piore, Phelpsなど経済学の古典を引用している一方で、本研究が社会学のなかでどのような位置にあるのかが見えにくいように思います。これは、社会学で申請するから社会学の先行研究を引用すべきということではなく、どのような先行研究群を基盤としているのかがイメージできるということが大事なのだと思います。ここが明確でないと、先行研究に対する貢献が何であるのかがわからない、伝わらないということになりますから、あまりいい印象ではないだろうと思います。

なお、DC2でも研究計画や研究業績、自己評価といった部分はあまり変わっていないので、やはりそれ以前の研究目的・研究内容をきちんと書くことが重要なのではないかというのが個人的な感想です。