『家族社会学研究』に論文が掲載されました
『家族社会学研究』第28巻第2号に、私の論文「結婚は職業キャリアにいかなる影響を与えるのか?——無業・管理職への移動に関する男女比較分析」が掲載されました。まだ電子公開はされていませんが、電子公開されました(2018/4/15追記)。興味のある方はご覧ください。
要約
本稿では,結婚が職業キャリア形成,とりわけ無業への移動と管理職への移動に与える影響について,男女を比較しながら明らかにする.本稿の特徴は,ライフコース論の視座から,結婚の効果が時間により変わると想定し,セレクションと効果の変化に着目して分析する点にある.2005年SSM調査を用いたイベントヒストリー分析により,以下の点を明らかにした.無業への移動に関して,結婚の効果は結婚の直後から現れ,男性の移動を起こりにくく,女性の移動を起こりやすくする.ただし男性における効果の多くは結婚へのセレクションによるものである.管理職への移動に関して,結婚の効果は結婚から数年間を経てから顕在化し,男性の移動を起こりやすく,女性の移動を起こりにくくする.以上見られた男女で非対称な結婚の効果は,結婚による夫婦間の性別役割分業と,その蓄積の結果として生じる人的資本の格差によって生じているものと見られる.
追記(2016/12/9)
本論文について、公益社団法人程ヶ谷基金「男女共同参画・少子化に関する研究活動の支援、並びにこれに関する顕彰事業」論文部門にて優秀賞をいただきました。本論文の公刊および顕彰への応募の過程で多くの方のご支援をいただきましたこと、お礼申し上げます。
表彰式にて、ある方から「私たちが肌で感じていることを、若い世代の男性がこうやって実証的に示してくれて嬉しい」といったお言葉をいただき、非常に嬉しく思いました。自分の研究は、女性の就労や子育てを最前線で支援しているような活動とは違って、即座に社会の役に立つことはあまりないかもしれません。ですが、社会における不平等や不条理のありかを示していくことで、微力ながら10年後、20年後の社会に貢献できるような、そんな研究をしていければと思います。