伊神満(2018)『「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明』読書記録
「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明
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まったくの専門外なのでたんに息抜きとして読んだのだけど、軽妙な語り口で、すらすら読めた(若干皮肉がキツい箇所が多いのでそういうのを受け流せない人は苦手かもしれない……笑)。研究の問いがいかに立てられ、いかに解かれていくのかという過程を追体験できるような本で(といってももちろん本当の実際の過程はもっと試行錯誤があったのだろうけれど)、面白く読めた。
いい文言があったのでメモ。
そのまま放っておいたら「データは何も語らない」ということだ。むしろ私たちは積極的に「データに耳を傾ける」必要がある。そのための基本チェック・リストは、次のようなものである。
- データ化されている各指標は、正しく測られているのか。
- それらは、(リサーチ・クエスチョンに照らして)本当に意味のある変数なのか。
- 生のデータが生成される過程、すなわちデータの背後にある現実は、どのようなものなのか。
- それらの文脈に鑑みて、データ分析上、どのような問題が起こっている可能性があるか。
- だとすれば、どのような分析手法が望ましいか。その分析が論理的に成立するためには、背後にどのような仮定が必要か(どのような仮定を暗黙理に前提としていることになるのか)。
他にもいろいろな問題が起こり得る。現実世界は複雑だからだ。そして現実世界と同様、すべての問題を解決することは出来ない。
……にも関わらず、それらの問題について考え抜くのが分析者の使命である。なぜならデータを分析したいと言い出したのは私たち(分析者当人)であり、すべては私たちの問題設定、リサーチ・クエスチョンに答えるための仕事だからである。
だから自分が欲しいものは、常にハッキリさせておかねばならない。
(中略)
あなたが本当に知りたいのは何なのか、それはあなたにしか分からない。データの生成過程がどうなっているのか、それは表面に出てくるデータ内容ではなく、データの母体となる現実世界そのものについての洞察である。
したがってデータ分析の真髄とは、
- データ内の「観測された」変数やその値
に現れるようなものではなく、むしろ
- データには「観測されていない」「目には見えない」何か
について、どれだけしっかり考え抜いたかにある。(p.137-140。太字は書籍中で強調されている箇所)
ところで本書では著者が指導教員によく「君の『問い』は何だ?(”What’s your question?”)」という質問と、「それがどうした?(”Who cares?”)」1)筆者はこれを「世の中の誰がその『問い』に関心を払うべきか?(”Who should care about your question?”)」というふうな意味だと述べている。という質問の2つを投げかけられたというエピソードが紹介される(p.266-269)。これを見て、自分の指導教員もよく指導教員から”What is your question?”と尋ねられたとおっしゃっていたことを思い出した。分野は違うけれど、どこに行っても本質的な部分は共通しているのだなと思った次第だった。
Notes
↩1 | 筆者はこれを「世の中の誰がその『問い』に関心を払うべきか?(”Who should care about your question?”)」というふうな意味だと述べている。 |
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