Presented my research in RC28 Spring Meeting in Frankfurt
3月21–23日にかけて、ドイツ・フランクフルトで開催されたRC28 Spring meetingに参加し、研究報告をしました。RC28というのは国際社会学会(International Sociological Association)の50以上あるResearch Committeeの一つで、社会階層・社会移動をテーマとした研究グループです。こちらのポスターセッションにて報告をしました。1つは自身の研究報告(内容はこちらから)で、もう一つは東京大学の豊永耕平さんとの共同報告(内容はこちらから)、こちらの報告については豊永さんに報告していただきました。
今回は過去最大規模の参加人数で、報告応募人数も過去最大であったとのことでした。他の参加者の報告はどれも面白く、たくさんの刺激を受けて自分も(英語でちゃんとアウトプットを出せるように…!)もっとがんばろうと思いました。RC28のMeetingはだいたい年に2回、春と夏に行われているのですが、今後も継続的に参加できるようにがんばりたいと思います。
ちゃんとメモを取っていないのでうろ覚えですが、とくに面白かったと思った報告の概要について以下のとおり記録しておきます。
Inequality at the top. The gender wage gap among the educational elite in the early career
2004–2008年にイタリアでPhD degreeを取得した人への調査を用いて、Educational eliteである(とされる)PhDのなかでどの程度男女間の賃金格差があるのかを分析。分析の結果、男性は女性よりも15%程度賃金が高い。また女性の平均を男性のそれに揃えて分布を比較した場合、男性の賃金分布はより低いほう、高いほうに集まっている(分散が大きい)ことが確認された。
Do employers discriminate by gender? Evidence from six comparative cross-national harmonized field experiments
ヨーロッパ6か国、6つ(?)の別々の職業の求人に対してランダムに生成したFake CVを企業に送付し、Callback rateを男女間で比較して雇用主による差別の大きさを測定する。分析の結果、異なる6つの国いずれにおいても女性のほうがややCallback rateが高かった1)この原因はまだ子どもがいない若い男女のCVを作成したことにあると思われる。。また、とくに女性比率の高い職業において、男性のCallback rateが顕著に低くなる傾向が見られた。
Surpassing class-based explanations: Networks of intra-generational occupational mobility
キャリアにおける職業移動のネットワークを作成し、ネットワーク研究で明らかにされているネットワークの構造特性によって、職業移動のネットワークの生成過程をどの程度説明できるのかを検討。分析の結果、従来大きな階級としてくくられてきた階級内の職業間移動は、スキルの類似性などよりもむしろネットワークの構造特性によって説明できる部分が大きいことが示された。
Training regimes and skill formation in France and Germany: An analysis of change between 1970 and 2010
フランスおよびドイツにおける教育と職業のリンケージがこの数十年の間に強まったのか弱まったのか、また変化したとすれば、それは教育達成や職業の分布が変化したゆえであるのか(Compositional shift)、それともそうでない構造的な変化(structural shift)によるのかを検討する。M-indexを用いて教育と職業のリンケージを測定し、さらに要因分解分析を行う。分析の結果、両国とも教育と職業のリンケージは強まったものの、その変化を促したメカニズムは同一ではなく、要因分解が可能なM-indexの有用性が示された。
Skill levels and development across the life course – a task based approach
仕事に用いるタスクから構成されたanalytic, interactive, manual, non-routine, autonomyの5つのスキルがライフコースのなかでどのように変化していくのかを4年間のパネル調査データを用いて分析。分析の結果、これらのスキルは若年期に大きく伸び、壮年期はあまり変化せず、高齢期には下がる(あまりスキルを必要としない仕事に移る)という軌跡を描くことが確認された。学歴で分けると、高学歴層はAnalyticなスキルがとくに大きく伸び、低学歴層はinteractiveなスキルがとくに大きく伸びることが示され、要求されるスキルには階層差がある(うろおぼえ)。
Terrorist events, media coverage and their effects on labor market segregation in Germany
テロに関する報道の増加がムスリムがほとんどを占める国出身の採用を減らす効果を持つのかを、各企業の毎月の採用者および出身国別人数を記録したパネルデータを用いて検証。固定効果モデルを用いた分析の結果、テロに関する報道のあと1–3か月間はムスリムがほとんどを占める国の出身者の採用率が減少することが示された2)フロアからは供給側の要因(テロ報道があったときにはムスリムがほとんどを占める国の出身者が求人を出すことを控えるのではないか)という指摘があり、なるほどと思った。。
Are female managers agents of change or cogs in the machine? An assessment with three-level manager–employee linked data
企業における女性管理職が高いことは、当該企業で働く男女の賃金を高めるのか、それとも低めるのかをマネジャーと被雇用者をマッチングさせたデータを用いて検証。分析の結果、女性管理職比率が高いことは賃金を高めるとも低めるともいえず、女性管理職の増加が(たとえば生産性を低めたり消費者や取引先から敬遠されることを通じて)企業にとって悪い結果をもたらすという議論は支持されないということが示された。
Occupational licensing and the gender gap in wages
職業資格(Occupational licensing)は当該職業の賃金水準を高めることが指摘されている。ではこうした資格は男女間の賃金格差に対してどのように機能しているのか。分析の結果、女性は男性よりも職業資格が必要な職業に就いている比率が高く、職業資格が必要な職業に就いていることで得られる賃金へのリターンもより高い。リターンの違いの大部分は職業分離によって説明できる3)具体的にどういう意味かよくわからなかった。。。こうした職業資格は、全体の男女間賃金格差を18%相殺する効果を持っており、職業資格の整備は男女間賃金格差の縮小に寄与するのではないかという結論が得られた。