2021年度後期 社会学IV
テーマ
社会階層論の現在
開講
学習院大学法学部 後期
授業の概要
高い収入や貯蓄、住宅、健康、名誉、幸福、等々、社会において希少とされる財は人びとに等しく配分されているわけではない。さらに、希少な財を得るためのチャンスもまた、人びとや集団の間で異なっている。こうした希少な財の配分はどの程度偏っているのか?希少な財を得る機会が個人あるいは集団間でいかに異なるのか?希少な財の配分やそれを得る機会が異なるのはなぜなのか?社会階層研究はこうした不平等を研究する社会学の一分野である。
社会階層研究の扱う分野は多岐にわたるが、なかでも主要な問題とされてきたのは以下の3点である。第1に、希少財の配分がどの程度偏っているのかという配分の不平等、第2に、希少財を得る機会がどの程度偏っているのかという機会の不平等、そして第3に、生まれ持った属性がいかに配分や機会の不平等につながるのかという属性による不平等である。
本授業では、上記3つの主要な問題それぞれについて、欧米を中心とする理論および実証研究の蓄積を概観することを通じて、社会学、および社会階層研究の視点から社会の不平等を捉えるための視点を身につけることを目指す。また、上記3つの問題に関して、欧米を中心に確認されてきた動向が日本においてはどの程度確認されるのかといった点についても、利用可能な先行研究をもとにその成果を紹介する。これを通じて、日本の不平等の位置づけを国際的な視点から理解する。
授業内容
- ガイダンス
- 配分の不平等(1):不平等の拡大傾向
- 配分の不平等の測定
- 所得と富の不平等:国際比較とトレンド
- なぜ不平等が拡大したのか:アメリカの場合
- 配分の不平等(2):富裕層と貧困層/日本の不平等
- 富裕層と貧困層
- 日本の不平等の実態とメカニズム
- 配分の不平等(3):階層間格差と不平等の帰結
- 階層間格差:健康と家族形成
- 不平等の帰結
- 配分の不平等(4):階層分離と認識のずれ
- 不平等と階層の分離
- 客観的位置と主観的認識のずれ
- 不平等に関する価値観
- 機会の不平等(1):世代間移動
- 社会移動の測定
- 所得移動:トレンドと国際比較
- 職業移動:階級分類と移動率の計算
- 機会の不平等(2):近代化仮説と地位達成過程
- 近代化仮説
- 地位達成過程
- 日本の社会移動のトレンド
- 機会の不平等(3):教育機会の不平等
- トレンドをめぐる議論
- 教育機会の不平等のメカニズム
- 遺伝か環境か
- 機会の不平等(4):労働市場と機会の不平等
- 教育と到達階層の関係:メカニズム
- 日本の雇用慣行と世代内移動
- 出身階層の影響力の再検討
- 属性による不平等(1):ジェンダー不平等
- ジェンダーの視点と不平等
- ジェンダー不平等:国際比較とトレンド
- 日本のジェンダー不平等のトレンド
- 属性による不平等(2):教育とジェンダー
- 教育達成の男女差
- 性別専攻分離のメカニズム
- 属性による不平等(3):労働市場とジェンダー
- 賃金格差の原因を探る:要因分解
- 仕事の違いを測定する:性別職域分離
- 格差の生成過程:採用とキャリア
- 属性による不平等(4):家族形成とジェンダー
- 出産・育児と男女のキャリア
- 性別役割分業と結婚
- まとめ