2021-09– 学習院大学法学部「社会学IV」
テーマ
社会階層論
開講
学習院大学法学部 後期
同内容は2022年度に日本女子大学人間社会学部、津田塾大学総合政策学部でも行いました。
授業の概要
高い収入や貯蓄、住宅、健康、名誉、幸福、等々、社会において希少とされる財は人びとに等しく配分されているわけではない。さらに、こうした希少財を得るためのチャンスもまた、人びとや集団の間で異なっている。希少な財の配分はどの程度偏っているのか?希少財を得る機会が個人あるいは集団間でいかに異なるのか?希少財の配分やそれを得る機会が異なるのはなぜなのか?社会階層研究はこうした不平等を研究する社会学の一分野である。
社会階層研究の扱う分野は多岐にわたるが、なかでも主要な問題とされてきたのは以下の3点である。第1に、希少財の配分がどの程度偏っているのかという結果の不平等である。所得や富の不平等の程度は国や時代によってどの程度異なるのか?不平等が拡大しているとしたらそれはなぜか?階層によって健康や家族形成のパターンはどの程度異なるのか?人びとのもつつながりは階層によってどの程度隔たっているのか?こうした問いが検討される。
第2に、希少財を得る機会がどの程度偏っているのかという機会の不平等である。親の階層とは異なる階層に移動するという世代間移動は増えているのか、減っているのか?変化しているとしたらそれはなぜか?親の階層によって教育機会の不平等が生じるのはなぜか?高い学歴を有する人がより高い階層に就くのはなぜか?これらは機会の不平等に関わる問いである。
第3に、生まれ持った属性がいかに配分や機会の不平等につながるのかという属性による不平等である。本授業ではとくにジェンダー(性別)による不平等を扱う。ジェンダー不平等は国によってどの程度違うのか?不平等の程度はどのように変化しているのか?男子は理系、女子は文系に進学しやすいのはなぜか?男性と女性が労働市場で異なる仕事に就き、異なる評価を受けるのはなぜか?家族形成がキャリアに与える影響が男女で異なるのはなぜか?こうした問いがジェンダーによる不平等という観点から検討される。
本授業では、上記3つの問題それぞれについて、実証研究の蓄積を概観することを通じて、社会学、および社会階層研究の視点から社会の不平等を捉えるための視点を身につけることを目指す。また、上記3つの問題に関して、欧米を中心に確認されてきた動向が日本においてはどの程度確認されるのかといった点についても、その成果を紹介する。これを通じて、日本の不平等の位置づけを国際的な視点から理解するとともに、不平等がいかにして生じるのか、そのメカニズムを理解することを目指す。
ガイダンス
結果の不平等(1):不平等の拡大
結果の不平等の測定
所得と富の不平等:国際比較とトレンド
富裕層と貧困層
結果の不平等(2):不平等の拡大のメカニズム
なぜ不平等が拡大したのか:アメリカの場合
日本の不平等の実態とメカニズム
結果の不平等(3):階層間格差と不平等の帰結
階層の測定
階層間格差:健康と家族形成
結果の不平等の帰結
結果の不平等(4):階層分離と認識のずれ
不平等と階層分離
客観的位置と主観的認識のずれ
不平等に関する価値観
機会の不平等(1):世代間移動
社会移動の測定
職業からみる世代間移動
所得からみる世代間移動
機会の不平等(2):近代化仮説と地位達成過程
近代化仮説
地位達成過程
日本の社会移動のトレンド
機会の不平等(3):教育機会の不平等
トレンドをめぐる議論
教育機会の不平等のメカニズム
遺伝か環境か
機会の不平等(4):労働市場と機会の不平等
教育と到達階層の関係:メカニズム
日本の雇用慣行と世代内移動
出身階層の影響力の再検討
属性による不平等(1):ジェンダー不平等
ジェンダーの視点と不平等
ジェンダー不平等:国際比較とトレンド
日本のジェンダー不平等のトレンド
属性による不平等(2):教育とジェンダー
教育達成の男女差
性別専攻分離のメカニズム
属性による不平等(3):労働市場とジェンダー
賃金格差の原因を探る:要因分解
仕事の違いを測定する:性別職域分離
格差の生成過程:採用とキャリア
属性による不平等(4):家族形成とジェンダー
出産・育児と男女のキャリア
性別役割分業と結婚
まとめ