授業で使えそうな新書のリスト
社会学系の少人数授業等で使えそうな、またはすでに使った実績のある書籍をテーマ別にまとめておく。使ったものについてはいずれも学部一年生向け授業である。とくに網羅的であることを目指したものではなく、たんに筆者(麦山)の独断で選んだものにすぎない。選定基準は以下のとおり。
- 十分な参考文献(先行研究)を参照している。
- 実証的な方法(主として計量分析またはその結果のレビューを中心としたもの)にもとづいている。
- 執筆時点における最近の研究動向を反映している。
以下、とくに理由はなく出版年が新しい順に並べている。
谷原つかさ,2024,『「ネット世論」の社会学:データ分析が解き明かす「偏り」の正体』NHK出版新書.
- メディアを扱った新書はたくさんあるが、定量的な方法にもとづく実証研究は少ない。本書はその意味で貴重。
三谷はるよ,2023,『ACEサバイバー:子ども期の逆境に苦しむ人々』ちくま新書.
- 先行研究のレビューが網羅的で有益。
- サーベイ実験など先進的な方法についての説明も載っていてすばらしいが、若干授業で使うには躊躇するかもしれない題材。
牧野百恵,2023,『ジェンダー格差:実証経済学は何を語るか』中公新書.
- 因果推論についての簡単な説明があるほか、規範を重要な概念として位置づけている点で、社会学的な書籍としても読める。
メアリー・C・ブリントン(池村千秋訳),2022,『縛られる日本人:人口減少をもたらす「規範」を打ち破れるか』中公新書.
- 少子化について仕事、家族、規範といった視点からわかりやすく論じていて導入に適している。
永吉希久子,2020,『移民と日本社会:データで読み解く実態と将来像』中公新書.
- 移民の定義のような基礎的な内容についての説明もあるほか、先行研究のレビューが網羅的で有益。
松岡亮二,2019,『教育格差:階層・地域・学歴』ちくま新書.
- 多くの図表が掲載されていて、その多くがクロス表や散布図のような基本的なものなので特段統計的な知識を持っていない学生でも読みやすい。
以下は未読のため保留中
秦正樹,2022,『陰謀論:民主主義を揺るがすメカニズム』中公新書.